世田谷区 マンション、その展望を探る
一つはレーガノミックス以降、「財政赤字」、「貿易赤字」の「双子の赤字」を垂れ流し続けているアメリカ政府であり、もう一つは日本政府である。
サブプライム問題以降、いまでも「対岸の火事」程度の認識しか感じられない日本政府の罪も相当なものだ。
「ゼロ金利」、「円安麻薬(輸出産業は歓迎したが)」、「円の逆さバブル(低金利で過剰なまでに価値が低下した「円」)」を放置し、低金利で安い円を借りて、海外の高金利資産に投資する「円キャリー取引」を促進させ、「バブル崩壊の処方菱は再びバブルをつくること」という誤った方策を採り続けてきた。
円は対ドルについては、現時点(二○○八年九月)では百円台半ばで推移し、百二十五円をつけていた以前ほどは安くなくなったが、それでも「強い通貨」とはとても言えない。
しかし、対ユーロなどでは、まだまだ円安状況は変わらない。
第二の犯人は、本来、信用秩序を護るリーダーであるべき金融機関である。
彼らはこぞって「強欲資本主義」の担い手となり、「収益の増強」を「信用の維持」よりも大事な価値観として、無節操な企業行動を続けてきた。
自己資金で相場を張り(かつてはこれを「手張り」と呼び、証券会社でさえ禁止しているところが多かった)、「投資銀行宣言」なるものをスローガンとする商業銀行があるくらいだ。
「銀行は預金者の請求があれば、預かった金(かね)をいつでも耳をそろえて返すことが、至上至高の命令と心得るべきである」(住友銀行外国為替部門の生みの親・大島堅造の言葉。
「一銀行家の回想』図書出版社)というような不朽の経営理念は、残念なことに今や一顧だにされない。
過剰流動性と強欲な人間が結びつくことは、経済にとっては歴史上もっとも最悪のコンビネーションであるが、このコンビがあたかも世界を制したかのように振る舞った時間が、余りにも長く続いてしまった。
そしていま、金融危機は深化の度合いを強め、折からのインフレ圧力もあり、実体経済が傷み、世界は大不況に突入しようとしている。
「焼け石に水」の経済対策私がニューョークにやってきたのは一九八四年である。
以来、アメリカ経済をずっと見続けてきたが、基本的にアメリカ経済は「バブルをつくっては破裂させ、破裂させては金融を緩和して、再びバブルをつくる」ことの繰り返しであった。
違いといえば、その都度バブルはより大きなものとなり、崩壊のショックも一層深刻なものになるということだ。
バブルの崩壊を再びバブルを形成することによって解決しようとするのは、安易かつ間違った政策である。
しかし、この政策が是正される可能性は非常に小さい。
アメリカのGDPはその七割を個人消費に頼っている。
その個人消費は、借金で賄われており、ホーム・エクイティー・ローンやクレジット・カードなど、消費者金融に大いに頼っている。
景気の両輪は企業の設備投資と個人消費だが、アメリカに限っていえば、両輪の一つはもはや「個人消費」ではなく、「個人浪費」と呼んでよいくらいだった。
アメリカの家計の有利子資産は、一九九九年までは有利子負債を上回っていた。
同年に逆転し、二○○七年には、有利子負債は有利子資産の一・三倍となった(連銀、トムソン・データストリーム社)。
金余りによって融資基準が緩められた結果、家計はどんどん借り入れを増やした。
これがアメリカ人の浪費を促進させた。
もっとも、その浪費により、日本や中国の輸出が伸び、世界経済が潤ったのも事実である。
○七年のアメリカ貿易収支の赤字は七千百十六億ドルである。
対中国、対日本、対メキシコ、対カナダ、対欧州、すべて赤字である。
これを見ても明らかなように、アメリカの繁栄は借金に依存した「砂上の楼閣」に過ぎなかった。
しかも、サブプライム危機を受けて、アメリカ政府は経済対策を実施して、財政赤字をさらに膨らませた。
金利を引き下げ、所得税減税、法人税減税、住宅市場対策などを柱とした二○○八年の景気対策の総額は、一千六百八十億ドルである。
分かり易く言えば、一千六百八十億ドルを政府が借金し、中産階級以下にばら撒くという政策を取った。
表現を変えれば、個人が浪費のために個人の力で借金できなくなってしまったのなら、政府が代わって借金して現金を配るから、とにかく「浪費を続けよ」という政策である。
そして○八年五月から、アメリカ国民一人あたり最大六万円程度の小切手が送られた。
この愚策によって、アメリカの二○○八年の予算は四千百億ドルの財政赤字となる。
この四千百億ドルの赤字の主たる要因には医療保険年金などもあるが、一千六百八十億ドルが上記の目的のための支出で、二千四百七十六億ドルが軍事費である。
これらのお金が生産性を向上させ、新たな生産基盤を創造し、真の経済価値を生むためのものとして使われまた、経済対策に関するアンケートを取ると、一千六百八十億ドルの七割は貯金と借金返済に使われた。
その残りが消費されたとしても、どのみちアメリカ国内で購入されるのは輸入品が大半になる。
「真水」となってアメリカ経済を潤すことになったのは、経済対策に投じられる税金のほんの一部に限られた。
実際に小売が伸びたのは六月まで。
翌月にはもう効果は薄れた。
対症療法も良いところだった。
一方、大幅な金利引下げとドルの下落により、石油、金、穀物、および輸入品の価格は急騰し、インフレの懸念は強まった。
「ビジネスウイーク」誌の見解では、担保力の減少と消費者金融機関の融資抑制によるアメリカ消費者の購買力の低下は、二○○七年第4四半期で一・五兆から二兆ドルとのことである。
つまり、経済対策としては、一千六百八十億ドルでは「焼け石に水」であり、むしろいたずらに財政赤字を膨らませたに過ぎない。
このことの罪の方が重いと私は考える。
不況の深刻化から、国家財政、州財政ともに未曾有の歳入危機を迎えている。
アメリカ連邦政府の赤字は四千九百億ドルと史上最悪に膨らむという予想が出ているし、ウォール街からの税収が激減するニューョーク州は、すでに「財政危機緊急宣言」を出した。
アラバマ州の郡にはすでに金利が払えず破産したところが出た。
サブプライム危機から世界同時不況へ満身創痩のドルレーガノミックス以降の「浪費に頼った成長政策」は、まことに馬鹿げた経済政策である。
それではなぜ破綻しなかったのか。
一言でいえば、「強いドルはアメリカの国益」などとスローガンさえ叫んでいれば、赤字で垂れ流したドルが、主に証券市場を通してアメリカに還流し、借金の借換えが極めてスムースに運んできたからである。
産油国の黒字、日本の黒字、中国の黒字が資本勘定でアメリカに還流した。
しかし、いよいよそれも期待できなくなりそうである。
ドルは、もはや世界唯一の基軸通貨ではなくなりつつある。
ユーロの台頭しかり、産油国のドル・ペッグの見直ししかり、外貨準備の多様化しかり。
我が身を正すこともなく、「強いドルはアメリカの国益」などと繰り返し叫んできたツケが重くのしかかっているということだ。
ありとあらゆる面から見て、アメリカは経済を縮小し、身の丈にあった生活に戻る他、回復の道はないのである。
アメリカの浪費に合わせた経済運営をしていた国も、これまた同様である。
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